↑ International SP. モデルは、国旗がモチーフ。ツインインパクトラインが特徴的だ。ネームも通常の赤ではなく、黒ネームが採用された。表地は8号帆布生成りに近いベージュをセレクト。楕円のファスナー引き手はスピーチバルーンオリジナルで、他プロダクトにも使われるシグネチャーアイテムの一つだ。先端のつまみ部分には背景と同じ本革が使用されている。
StreetMaster

ペンケースが日本文化だと知ったのは留学して間もなくだった。カリフォルニアの高校に通学する学生たちは、鉛筆はおろか、メカニカルペンシル、つまり、シャーペンすら持たない奴らばかりだった。当然、ペンケースなど持ってるはずもなく、安っぽい20本で1ドル99セントのボールペンをカバンのポケットに2~3本、適当に放り込んでいた。ペンケースは筆箱から独自の進化を遂げた、日本の独自文化、ガラパゴスな産物なのだ。そして、スピーチバルーンは、そのガラパゴスなペンケースに全力で取り組んでいる。
 今回のストリートマスターシリーズは、もしも当時自分が通ったカリフォルニアの高校の友達にペンケースを紹介するとしたらどんな物がいいかを考えた。彼らにも受け入れられるペンケースなら、日本でも絶対にうまくいく、そう感じたからだ。ペンケースにいろんな機能を持たせても、興味を持たないだろう。十徳ナイフよりバカでかいナイフがいいという連中だ。見た目と質感で興味を持たれなければアウトだ。
アイデアが次々を浮かんでは消えてゆく。アメリカンテイストって何だろう。ベースボール?ロックンロール?エクストリームスポーツ?いや、もっとわかりやすい何かがあるはず・・・そうだ。
あるじゃないか。
アメリカンテイストでも、インパクトがあって、日本人でも楽しめるもの!スニーカーだ!スニーカー好きが、すんなりと好きになれるデザインにしよう!そうと決まれば後は簡単! ・・・ではなかった。
 現行のペンケースをスニーカーっぽい感じに仕上げようと試行錯誤するも、失敗。コストの問題やパーツの仕入れの問題もあったが、何より見た目が65点ぐらいだった。悩みに悩んでも満足する出来栄えの商品が作れず、1年が経過した。
ある日、商品企画の糸口を掴もうと、古い商品を見直していたら、同僚がとあるペンケースを発見した。

スニーカーを好きな人が
すんなりと好きになれる
デザインにしよう

 「ソードペン」という名前のペンケースは、父が十数年前にデザインしたペンケースだ。スリムタイプのペンケースが流行った頃のデザインで、ペンは5本くらいしか入らない。しかし、そのペンケースを見たとき、何か感じる物があった。これはいける。現代風にデザインやサイズを少し手直しすれば、理想のペンケースの形になるかもしれない │ すぐ試作に取り掛かり、まずベースとなる形が完成した。 StreetMaster
 最初はミリタリーっぽさも面白いかな、と思い、モスグリーンで企画を進めた。しかし、形はそれっぽいが、何だか野暮ったい。ここでまた立ち止まった。「写真1」
 試行錯誤すること2週間。斜めのインパクトラインをつけよう!と思いつき、すぐに試作した。「写真2」
 まだ足りない!とファスナーの両横にラインを足した。ストリートマスターの完成だった。「写真3」
 ストリートマスターシリーズでは、中高生でも買える値段から、もっとこだわりたい人のために、上の価格帯も用意する予定だ。見出しの写真はまだ未発売モデルのインターナショナルスペシャル・ドイツ。2本のインパクトラインと黒ネームでドイツカラーにしている。フルレザーモデルや、アーティスト、企業とのコラボレーションなども企画している。
 スニーカーはひとつの時代を築いた。ペンケースのメーカーとして、ペンケースを1つのファッションアイテムとして世の人に認識してもらえたら、こんなにも嬉しい事はない。
 机の上は、時には服より、髪型より、持ち主がどんな人間か主張する。だからそんなつまらないペンケースはやめて、ストリートマスターを持とう。そして机上に繰り出そう!

profile

小山敦司
スピーチバルーン プロダクトデザイナー
テープ素材のペンタワーや帆布のREGEXなど、男性向けステーショナリーのデザインを主とするプロダクトデザイナー

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